ベトナムで開発チームを作る(作ってた)話

この記事は a-suenami Advent Calendar 2018 - Qiita の 2 日目の記事です。

タイトルの通り、 1 日目に紹介した「すえなみチャンス」を発想したきっかえでもある、ベトナムでの開発経験について書きたいと思います。

ベトナムでの開発体験

僕は以前、某キュレーションメディアの会社*1で働いていたのだけど、そのときに開発をスケールさせるためにベトナムで開発チームを作るって話があって、僕がそのマネジメントというかそれっぽい任をいただいてしばらくベトナムに住むってことがあった(1年くらいいた)。

今はその会社をやめて主に日本にいるようになったけど、その会社とは別に小さなチームがあって、たまにベトナムには行っていたりするので、その経験談を書こうと思います。

ベトナム人の特徴

ベトナム人の特徴ですが、もちろん「人による」というのは人種問わず当たり前なので、あくまで総論・一般論として、ベトナム人と付き合うときの Tips という風に考えてもらえればと思います。

真面目、従順(≠誠実)

ベトナム人の紹介で一番最初に出てくる特徴がたぶんこの真面目さとか従順さだと思う。 彼らは年上だったりポジション的に目上だったりする人にちゃんと従うし、言うこともすごくよく聞いてくれる。僕はマネジメントとかっていうものをほぼ未経験でベトナムに行ったんだけど、メンバーの性格や気の使いどころという観点での苦労はほとんどなかったように思う。ちゃんと言えばやってくれるので。*2

ただ、よく言われる話として「ベトナム人は誠実だ」っていう話もあるんだけど、(もちろん誠実の定義によるんだけど)これは若干違うような気がしていて、言われたことをちゃんとやるということは裏返せば言わなかったことはできないし、言ったことであってもそれが満たされる限りにおいてギリギリまで手を抜こうとする(ように見える)。

まあ、これ自体はエンジニアという職種においてはいい側面もあるし、サボれる部分は積極的にサボってもいいと思うだけど、日本人相手のように「わからなかったら質問してくれるだろう」「定期的にレポーティングくれるだろう」という感覚だと納期ギリギリでやっぱりできませんでしたみたいなことになりかねない。*3

個人主義

これは個人の感覚なんだけど、仕事に対しては個人主義的なところがあるなぁと思う。あえて「仕事に対しては」と前提をおいたのは、ランチとか飲み会とかは結構みんなで仲良く行くし、業務時間外でそういう側面をあまり見ないから仕事や業務成果に対する競争意識みたいなものなのかなと想像している。

僕がベトナムで一番最初に強く違和感を覚えたが Slack の開発チャンネルが全然流れないこと。わからなかったら誰かに助けてもらおうとか、この人に質問しようとかっていうのが自然には身についてなく結構ギリギリまで自分ひとりで何とかしようとしてしまう。この責任感はよい側面もあるのでうまくマネジメントとして活かしつつ、チームメンバーに頼ったほうがいいところは頼りやすいような雰囲気やルール作りをするのが重要だと思う。

見栄っ張り

見栄っ張り、これはすごくある。まあ、日本人が謙虚というか自己主張が弱すぎるだけな気もするけど。

先に書いた個人主義と重なる部分もある気がしていて、仕事とかプロジェクトの成果に対しては自分の手柄と言いたいという志向性の人が多いように思うし、給料や待遇に対する要求も強い。そして彼らはカジュアルに他人に自分の給料を言うので、チーム内で給与格差があると低い方のメンバーのモチベーションは下がるし、マネジメントする側の立場としてはなぜあなたの評価がそうなっているのかを客観的な給与評価テーブル等を作って説明しなければ納得しない。

あと、これは中国人(だったっけ?)もそうらしいんだけど

  • 褒めるときはみんなの前で
  • 叱るときは本人を呼んで 1 対 1 で

というのが鉄則。

彼らの仕事はちゃんと評価してあげるべきだし、彼らのプライドを傷つけるようなことはしてはならない。

ライフラークバランスちゃんとしてる

これは日本のほうが特殊なんだろうけど、ライフワークバランスがしっかりしているなと思う。たまに残業しまくる人もいるけど、基本的に定時にあがって友だちや家族とすごす時間を大事にする。

ベトナムだと家族ぐるみの付き合いも多かったりするらしく、ホームパーティとか旅行とかにプロジェクトメンバーや上司が呼ばれたりする。そこで家族の人たちと仲良くなると結束が強くなるというか、もうちょっと打算的なことを言うとモチベーションの低下リスクや離職のリスクが下がる。

ベトナムでいいチームを作るためにはメンバー自身ももちろんだけど、メンバーの奥さんや旦那さん、ご両親に好かれることだとよく言われる。

ぼくがかんがえたさいきょうのべとなむじんちーむのつくりかた

ベトナム人の特徴を見て「あれ?」って思った人もいるかもしれないけど、ぶっちゃけ普通である。

むしろ日本のほうが特殊な気がしてて、空気を読んでなんとなくいい感じに成果出す人がいたり、長時間労働して帳尻を合わせたり、マネジメントが多少未熟でもメンバーがなんとなくいい感じにしてしまうってことがありえる。

逆にベトナムでチームを作ると成果が出せなかったらたぶんダイレクトにマネジメントが悪いって感じになる。もちろんこれは日本人でチームを作る場合にも意識しておかなければならないんだけど、僕が特にベトナムにおいて意識していることを以下に挙げようと思う。

長いものに巻かれる雰囲気を作る

デザインパターン、その逆のアンチパターン、またなんとかファウラーさんのような有名な人のブログ記事などは積極的に引用して個々のタスクレベルで指示を出していくとよい。

メンバーには正確に何をやって欲しいか、どういう成果を出したいかを伝える必要があって、これは当たり前の話なんだけど、その上で、その実現に向けて実際にどういう方法をとるか、どういうプロセスで進めるかということも伝えられると真面目なベトナム人という性質上、成功確率をどーんと上げることができる。逆に目的だけ伝えてあとは一任するっていう強すぎる裁量は十分にチームが成熟するまではやめたほうがいい。

このときに目的や期待する成果物の説明はともかくとして、そのための方法論の部分は個人による実力差や志向性が非常に出やすい部分で、ある程度世の中に知見がある(つまり、困ったときに本人が自分で調べることができる)方法をマネジメントとして指示してあげるほうがうまくいくケースが多い気がする。*4

最初はコミュニケータはちゃんといたほうがいい

ベトナムのベンダーはエンジニア以外にコミュニケータという通訳兼ディレクターのような人がいることが多い。会社によってはブリッジ SE (BSE)などとも呼ばれるが、この BSE という人は技術もわかる人を指す。

僕もベトナム人エンジニアと英語で直接コミュニケーションして開発チーム大きくしていくぜ!グローバルチームだ!と思った時期もあったけど、これがなかなか難しい。もちろん僕の英語力の問題は多分にあって、それはがんばらないといけないんだけど、比較的大きな機能開発ならともかくとして、小さなバグ修正とかニュアンスを伝えるのが大変な機能改修とかはたくさんあって、そういうのもすべて間に日本人が介在するのではスケーラビリティが生れないし、何よりどちらもノンネイティブ言語なのでコミュニケーション効率がよくない。

なので、コミュニケータは(少なくとも初期は)いたほうがいいと思う*5

年功序列であることを意識する

ベトナムは日本以上に年功序列である。わかりやすいのが人の呼称で、相手が年上の場合と年下の場合で違う。*6

なので、それをちゃんと意識して採用、育成、評価、権限委譲をしたほうがよくて、特にチームリーダーはそのチームで一番の年長の人にできると望ましい。優秀な若手、無能な年長者は扱いが難しく、後者は当然だとして、前者もポジションを与えにくいという意味で頭を抱えることがある。優秀な若手は優秀な年長者がいる前提においてはマイナス要因ではないので、とにかく無能な年長者だけはチームに入れないというのを意識しておくといいと思うし、仮にそこで失敗するとリカバリーが難しくなる*7

まとめ

ベトナムでの開発チーム構築は難しい側面も多々ある一方で、エンジニア不足が叫ばれる今の日本において大きな選択肢のひとつになっていって欲しいと思っており、僕は今もそういう世界を夢見てがんばっている。

「オフショは品質が〜」みたいな話はいろんな方面から聞くのだけど、その要因の結構な部分がマネジメントに起因するところもきっと多く、ベトナム人のエンジニアと仕事をしている僕の立場からすると彼らの技術力に由来していると思われたくはないという個人的な感情はすごくある。だからこそ、適切なマネジメントのもとで、彼らの能力が最大に発揮される仕組みを作って、日本、ベトナムの両国におって Win-WIn になるような世界にしていきたいなと思っている。

今日の焼肉屋

2 日目の本日の焼肉屋は昨日と同様に渋谷から「焚火家」をご紹介。

肉のヒマラヤという巨大な肉塊を焼けます!

https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13130110/

*1:リアルで僕を知ってる人はほとんど知ってると思うけど、まあいろいろ世間にはご迷惑をかけたので一応伏せる

*2:もちろん他の観点に対する難しさはある

*3:もちろん真面目で従順というのはあるので、レポーティングにしろ、コミュニケーションにしろ、ルールとか原則を設ければやってくれる。あくまで「自発的に」できるかどうかという話。

*4:その判断こそがプログラマの仕事だろって言う意見もあると思うけど、少なくとも僕はまだその領域に達してない。

*5:ちなみにコミュニケータはできれば女性がいい説を僕は唱えてるんだけど、それを声を大にして言うとジェンダー的に云々って言われそうなので今回は割愛。聞きたい人は飲みにでも誘ってください。

*6:年上の男性は anh, 年上の女性は chi, 年下は男女ともに em という。

*7:チームを分割するくらいしかとれる手がなくなる